《写真短歌》四長、西域を語る(4)「久保田早紀・異邦人」

     私にとって、西域の音楽と言えば、前回のブログ(リンク)に記した喜多郎作曲の「NHK特集シルクロードのテーマ」が一番だが、もう一つ忘れられない曲がある。それは1979年10月発売、三洋電機のカラーテレビのCMソングにも起用された、久保田早紀作詞・作曲の「異邦人・シルクロードのテーマ」である。当時のヒットチャート1位で、その後もZARD等多くの歌手がカバーした。

 この曲、元々は「白い朝」というタイトルで、作者の久保田早紀は、東京国立市の大学通りの並木通りの朝のイメージを書いたと言う。それを、ここまで、西域、シルクロードのイメージの楽曲にしたのは、敏腕プロデューサー酒井政利の力だろう。

 酒井は、この同じ年、ジュディ・オングの「魅せられて」をイントロにギリシャの民族楽器ブズーキを登場させ、エーゲ海のムードを醸し出し、一気にレコード大賞をジュディ・オングにもたらしている。そして、この「異邦人」に於いても同様、中近東の民族楽器ダルシマーを使いシルクロードのイメージを現出、80年代の日本のシルクロードブームを増幅するのに大いに貢献した。サビまで待てない現代の若者には、通じない魔法だったかもしれないが、当時の日本人は、この長めのイントロを聴き、それだけでシルクロードの雰囲気に痺れることが出来た。

 しかし、何度も酒井プロデューサーにダメ出しをされ、歌詞を書き直した久保田早紀の作詞力も只者ではない。特に2番の歌詞「市場に行く人の波に、身体を預け 石畳の街角を ゆらゆらと彷徨う 祈りの声 蹄の音 歌うようなざわき、、、」は、その翌年から放映が始まる「NHK特集シルクロード」の中で見た、オアシス都市カシュガルやサマルカンドのバザールの朝の情景そのものだ。(決して国立駅前の朝ではない。)

 作者本人の意図とは切り離されて、別の命を得て生き続けた楽曲の典型的な例だ。でも実は、作詞家・久保田早紀にも、心の奥にシルクロードへの憧憬が眠っていて、この機会に覚醒したに違いないと私は思う。

 曲の終わりのフレーズ「ちょっと振り向いて見ただけの異邦人」の「異邦人」とは、国境だけでなく、時も越えて来た人、久保田早紀自身に違いない。



※参照

このブログの人気の投稿

≪写真漢詩≫四長の『現代漢詩論』

《写真漢詩・短歌》臨時増刊・四長、江東区でプリツカー賞を堪能する。

仙台堀日記・臨時増刊号《写真漢詩・短歌》四長、磯谷渚監督作品「ポーラーナイト」を語る。

《写真俳句》臨時増刊・四長、横須賀美術館で山本理顕氏のプリツカー賞受賞を祝う‼️

《写真漢詩》四長、ウィーンで「第三の男」を追跡す。