《写真俳句》臨時増刊・四長、横須賀美術館で山本理顕氏のプリツカー賞受賞を祝う‼️

 

美術館正面、レストランのテラス席は朝から満席だ。

 夏至の頃、横須賀美術館を初めて訪れた。美術館の学芸員さんには申し訳ないが、目的は企画展ではなく、山本理顕氏設計の美術館建物そのものを見たくなったからである。このブログの「メニュー」→「アート」→「美術館」で探って頂けると分かるように、私は「美術館フェチ」、それも相当な「美術館建物フェチ」である。

 「美術館建物フェチ」にとっては、企画展の人気があまり高くなく、入場者があまり多くない方が、建物の内外をしっかり、ゆっくり鑑賞出来るし、許されれば写真撮影にも都合が良い。その意味では今回の訪問は理想的(失礼!)なはずであったが、少し考えが甘かった。

 ウィークディにも関わらず結構混んでいたのである。おかしいなとは瞬間思ったが、直ぐに納得した。私のような「美術館建物フェチ」とまでいかないまでも、美術館建物見学目当ての人が結構いたのである。理由は明白だ。今年の4月、美術館の設計者山本理顕氏がプリツカー賞を受賞したのだ。




 プリツカー賞!毎年4月、米国のホテルチェーンのオーナーであるプリツカー一族が運営する「ハイアット財団」から授与される賞であり、建築界のノーベル賞と例えられる。1979年創設より原則1年に1名に存命の建築家に授与されて来た。過去の受賞者を国籍別に見ると、なんと日本が9名(※)で最多!以下アメリカ8名、イギリス4名、フランス3名と続く。

※丹下健三(1987年)槙文彦(1993年)安藤忠雄(1995年)妹島和世・西澤立衛(2010年)伊東豊雄(2013年)坂茂(2014年)磯崎新(2019年)山本理顕(2024年)

 プリツカー賞の理念は「建築を通じた人類や環境への意義深い貢献」とのことだ。それを思えば、最多受賞は日本人としては何とも誇らしい。

 そしてその賞の理念を少し意識してこの美術館を巡ると色々な発見がある。山本理顕氏の考える「建築の貢献」が、建物のあちらこちらに散りばめられているのである。人類(地域の住民、遠くから訪れる人たち)と環境(周囲の自然)への行き届いた配慮が、柔らかく入場者を包み込む。普段より少し穏やかな優しい気分になったのは私だけではないだろう。

美術館の屋上、ガラスの屋根がそのまま海と繋がっている演出だ。


壁に施された色々な丸窓が切り取る景色・光景が優しい。(ガラス越しのショットにつき、私の姿も写っている。)


 館内見学の最後に横浜美術館の海に面したカフェテラスでランチを頂いた。目の前のシロツメクサのお花畑の向こうに見える浦賀水道を行き交う船たちを見ながら、ワイングラスを傾ければ、もう気分は最高!だ。幕末の歴史ロマン(ペリー来航)まで頭を掠める。

 そうか、これも理顕さんの仕掛け(演出)かな?理顕さんはその土地・空間が記憶する歴史まで意識して、この建物を設計したのかもしれない。もう脱帽だ!

 何はともあれ先ずは理顕さんに乾杯! 「理顕さん、プリツカー賞おめでとうございます!」心の中で呟いて杯を挙げれば、水道を渡る夏風が頬に心地良い。お陰様で珍しく俳句も簡単に出来ました。

遠く房総半島も見える。富津の辺りか?




蛇足だが、、

 横須賀美術館のある横須賀市は、言わずとしれた軍港の街、戦前は旧日本海軍の連合艦隊の重要基地があり、現在は海上自衛隊、米国太平洋艦隊の基地がある。JR横須賀線の横須賀駅で降りると目の前に軍港が拡がっている。ちょうどその日は、前にテレビで見た海上自衛隊の最新鋭護衛艦「もがみ」が停泊していた。

 敵のレーダーに写らないステルス艦のためか、なんか全体にのっぺりしている。印象としては同じ戦艦でも宇宙戦艦「ヤマト」というよりも、スターウォーズのダースベイダー率いる悪の艦隊の戦艦って感じだ。申し訳ないけど、いつも海や船を見ると私が反射的に感じる浪漫とか開放感をこの船には感じない。窓も少なく、有っても非常に小さい。この船で長期航海に出るとしたら乗務員も息苦しくないかな?って思っていたら、一句浮かびました。



 今日のブログで、熱く(イヤ、偉そうに)「山本理顕氏」と「プリツカー賞」について語った私だが、この美術館の中で重要なことに気がついた。重要なこととは、「『山本理顕』と『プリツカー賞』と私の不思議な縁」である。そして私は今までその縁に気づくこと無く過ごしてきたのだ。迂闊だった。「灯台下暗し?」とはまさにこのことである。それについては次回のブログでしっかりと報告するつもりだ。乞うご期待!



 

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