《写真漢詩》四長、西域を語る(1)「井上靖・敦煌」

  私は、中学生のときから西域に魅了されている。西域とは、古来、中国人が中国の西方にある国々を呼んだ総称である。地理的には、概ね中央アジアを指し、時にはインド亜大陸、西アジアまで含むこともある。そこを絹の道(シルクロード)が走り、エジプト・メソポタミア・ギリシア・ローマとの間で、様々な文化・宗教・産物が行き来した。


 魅了されるキッカケは、姉に勧められて井上靖の小説「敦煌」を読んだことだ。「敦煌」は井上靖が調べた西域の歴史的な「実」と、彼の想像した「虚」が綾なす壮大な物語だが、中学生の私には、主人公の「西域冒険・恋愛小説」だった。ワクワク・ドキドキが止まらず一晩で読了したのを覚えている。

 物語はこんな感じで始まる。中国・宋の時代、科挙(現代日本の国家公務員上級試験をもっともっと狭き門にしたもの)を受けるため田舎から出てきた主人公が、試験を待っている間に居眠りして受けられなくなり落第。ショックで街を彷徨っているとき、偶然に西夏(西域の国)の女の危機を救う。そのとき女から手に入れた一枚の布に書かれた西夏文字!主人公はその未知の文字に好奇心を掻き立てられ、西夏を求めて長い旅に出る、、、

 見事な導入部!それまで全く西域、西夏、西夏文字の存在を知らなかった私も一気に引き込まれた。そう。50数年前のあの晩、「敦煌」の始めの数ページを読んだあのとき。私の西域への想像の旅、憧れの旅、夢の旅も始まった。

 漢詩は、あのとき以来の西域への想いを載せた七言律詩。横の写真は、西域・シルクロードの女性を描いてはNO.1と言われる画家・田村能里子の「風河燦々 三三自在」。私の中で彼女の描く西域の人々と井上靖の小説の一場面が重なりあう瞬間がある。嬉しい瞬間だ。

このブログの人気の投稿

≪写真漢詩≫四長の『現代漢詩論』

《写真漢詩・短歌》臨時増刊・四長、江東区でプリツカー賞を堪能する。

仙台堀日記・臨時増刊号《写真漢詩・短歌》四長、磯谷渚監督作品「ポーラーナイト」を語る。

《写真俳句》臨時増刊・四長、横須賀美術館で山本理顕氏のプリツカー賞受賞を祝う‼️

《写真漢詩》四長、ウィーンで「第三の男」を追跡す。