《写真漢詩・短歌》ナポレオン・ポナパルト、歴史の峠を越える。

 

 
 フランスの画家、ジャック・ルイ・ダヴィッドの『サン=ベルナール峠を越えるナポレオン』である。私は、この絵の実物を2019年ウィーンのベルヴェデーレ宮殿で見た。見たときは大変驚いた。何故かといえば、私はてっきりこの絵は、フランスのベルサイユ宮殿にあるものと思い込んでいたからだ。私の記憶違いか?それともこれはコピーなのか?真相は直ぐに判明した。ダヴィッドのこの絵は、ほぼほぼ同じ絵がベルヴェデーレ宮殿とベルサイユ宮殿の2枚を含め全部で5枚もあると言うのだ。(美術界では有名な話で知らなかったのは私だけみたいだ。)

 余程、ダヴィッド、いやナポレオンは、この絵が気に入り、この絵の政治的な意味を見出していたのだろう。サン=ベルナール峠を越えて、ナポレオンがイタリアに奇襲を掛けたのは、1800年の12月、その1ヶ月前の11月にナポレオンはクーデターを起こし、自ら第一統領となり、独裁権を握った。しかし、まだ問題は内外に山積しており、絶対的な権力を確立するためには、イタリアとの戦いでの勝利が必須条件であった。ナポレオンは賭けに出る。イタリア攻めの常道と言われる4つの侵入路ではなく、敢えて難所のサン=ベルナール峠越えを選択し奇襲に成功する。絵は、彼自身が人生の山を越える場面、そしてフランスが歴史の峠を越える瞬間であったのだ。正にそのとき歴史は動いたのである。ナポレオンはそのことをヨーロッパ中に知らしめるために、ダヴィッドに5枚もの絵を描かせ、各国王室に飾らせたに違いない。

 前に画家カラヴァッジョの記事の回(※リンク)に、漢詩の七言律詩である人物を詠むには、その人物の人生が波乱に富んでいないと難しいと書いた。その点で言えばナポレオン程、漢詩にし易い人はいない。正に「ミスター・波乱万丈!」だ。壮大な(笑い)な七言律詩の3連作が出来た。





 漢詩を始めて、通算200作突破記念に詠んだ私としては超大作!(笑)、押韻は(一)が「イ」、(二)が「ウ」(三)が「ン」で踏みました。


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