《写真漢詩》京都吟行シリーズ(16)「嵐電」は「嵯峨野序曲」だ。



 末尾の漢詩は京都の嵐山・嵯峨野を詠んだ。彼の地は、漢詩の通り平安貴族の別荘地として始まり、現在では外国人観光客や修学旅行の国内有数の人気スポットだ。

 従っていつ行っても大変な人混みを掻き分け歩くことになる。かく言う私も、人混みは大嫌いと言いながら、京都ステイとなれば、結構な頻度で訪れている。魅力的な地であることは間違いない。

 でも本日は、その嵐山・嵯峨野の話ではない。その地へ私を運んでくれる小さな電車、「嵐電」についてである。

 私は嵐山・嵯峨野へはできる限り「嵐電」で行くことにしている。「嵐電」は、正式には「京福電気鉄道嵐山線」。四条大宮と嵐山を結んでいる。

 私はこの「嵐電」に乗るのが好きだ。先ず沿線の駅名が謎めいている。「蚕の社」「帷子ノ辻」「有栖川」「鹿王院」とか、どこも途中下車して路地を歩けば、怪しげなものが急に目の前に飛び出してきそうだ。

 そして沿線の太秦周辺には、今も東映と松竹の撮影所があるが、昔は、大映や東宝や日活の撮影所もあった。世界の映画祭で受賞して日本映画の評価を高めた名作「羅生門(黒澤明監督)」「雨月物語(溝口健二監督)」「山椒大夫(溝口健二監督)」「地獄門(衣笠貞之助監督)」もみんなこの嵐電沿線で誕生した。

 そんなことをつらつら考えて妄想に浸っていると、あっという間(あっという間ではあるが気分は盛り上げられている。)に終着駅「嵐山」に到着する。「嵐電」は私にとって、嵐山・嵯峨野滞在を盛り上げる「序曲」のような存在だ。

お気に入りの蕎麦店「よしむら」から、嵐山、渡月橋、大堰川を眺める。

 ところで、この「嵐電」の雰囲気を上手く醸し出した映画が2018年封切られた。鈴木卓爾監督の「嵐電」だ。「嵐電」を舞台に交錯する3つの恋を幻想的に描いたラブ・ストーリーだ。

 「幻想的に描いたラブ・ストーリー」と映画サイトの解説をそのまま引用させて頂き書いたが、鈴木卓爾監督作品!そんなに簡単ではない。

 時系列でなかったり、キャストの年齢設定に違和感があったり、劇中劇を入れたり、突然宮沢賢治の童話に出てくるような不思議キャラクターが登場したり、もう大変である。難解というのとは少し違うが、訳が分からないと言えば、訳が分からない。

 でもでも、映画を観た後の気分はそんなに悪くない。「嵐電」沿線ってこんなこんな感じあるよねって思えるのだ。嵐山・嵯峨野は今や世界的な観光地だが、そこへ行くまでの嵐電沿線はそうではない。正に京都市民の日常、生活の場だ。
 
 だがそこは京都、時空を超えて不思議なものが漂っている。そんな映画だ。貴方が今時間に余裕があり、心優しい気分のときに視聴をお勧めする。観れば次に「嵐電」に乗るときに、見える世界が違うと思う。














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