《写真短歌》グレート安藤の青い林檎。(神戸吟行シリーズ1)


  兵庫県立美術館の2階デッキである。この美術館を設計した安藤忠雄は「青春とは期間を言うのではなく、心の有り様を言う。」と言うサミュエル・ウルマンの詩を引用し、この「大きな青い(緑?の)林檎」を此処に置いた。

 安藤忠雄の青春は、ダイナミックでドラマチックだ。高校在学中にプロボクサーのライセンスを取得、フェザー級でデビューした。リングネームは何と「グレート安藤」だ。そのファイトマネーや木工家具職人で得た資金を元手に、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアに放浪の旅に出る。帰国後、毎日15時間以上独学で勉強し、建築科の学生が通常4年かけて学ぶ内容を1年で習得し、一級建築士試験に一発で合格した。

 その後の彼の世界を舞台にした活躍は周知の通りだ。大学に通っていないにも関わらず、アメリカの有名大学(イェール大、コロンビア大、ハーバード大、UCLA)は、こぞって彼を客員教授として招聘した。そして遂に東京大学工学部建築学科の教授に就任、定年迄勤めた。建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞も受賞している。

ベネチアの美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」の模型、
2009年開館。

 ここ迄の話だけでも、凄い!とてつもなく凄い!凄過ぎる。彼に「この大きな青い林檎は、私の青雲の志を象徴したオブジェだ。青年よ大志を抱け!だ。」なんて言われれば、見る人全員納得だ。でも安藤忠雄の「青い林檎」は、そんなものではなかった。もっと、もっとグレートだった。本当にグレート安藤だったのだ。

 近年、彼を続け様に病魔が襲った。2009年には、胆嚢、胆管、十二指腸を全摘、2014年には、膵臓と脾臓を全摘し、内臓が5つ無い状態となった。しかし、彼の創作活動は全く衰えることを知らない。病気前と同じペースで世界を飛び回り、話題性のある記念碑的(どんどん更新されるので、どれが記念碑的なのか分からないが)と呼ばれる作品を創造し続けている。

パリの現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」の模型、
2021年5月に開館した。

 

 安藤忠雄は語る「私は永遠に熟さない青い林檎だ」と、、、5つの臓器を無くしても走り続ける小さな巨人(グレート安藤)が置いた大きな林檎は、とてつもなく雄弁にそれを語っている。



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