《写真短歌》四長、関帝廟で永遠の賑わいを祈る。(横浜吟行3)



 横浜中華街の関帝廟である。コロナ禍下の2022年秋訪れた。

 関帝廟は、有名な「三国志演義」の英雄関羽を祀っている。関帝(関羽)は、孔子廟に祀られる孔子と双璧を為す中国で最も信仰されている神である。最高神、全能の神だ。宗教と政権との距離が常に揺れ動く中国本土にあっても民衆の人気は根強いものがある。香港や台湾へ行けば、そこら中で関帝廟にお目にかかり、多くの参拝者でどこもごった返している。特に広く海外に展開する華僑にとっては、関帝は絶対的な信仰の対象であり、チャイナタウンに関帝廟は必須アイテムになっている。此処横浜中華街もその例外ではない。

 でも関羽は、どうやって最高神、全能の神になったのだろうか?昔、少年文庫で三国志をドキドキしながら読んだ私には疑問だ。何故なら確かに関羽も三国志の英雄には違いないが、主人公の劉備玄徳や諸葛孔明に比べれば、主役級とは言い難い。重要な脇役の位置付けだ。その彼が何故?

 高名な武将であったことから、武神として信仰を集めた。義理や信義に厚い人物だったので商いの神様として祀られた。色々な理由があるようだが、どうも決定的な理由は「塩」にあるようだ。わかり易く説明するとこんな感じだ。



①大陸国家である中国人にとって、「塩」の採れる場所は限定され、その希少性は海に囲まれた日本とは比べものにならない。そのため古く前漢の時代から、「塩」の専売は国の事業であった。

②そしてその塩の最大の生産地は現在の山西省であった。それは中国の王朝が変遷しても変わらない。

③因みに山西省は関羽の生まれ故郷であり、古くから郷里の英雄として、関帝(関羽)を祀る関帝廟が作られていた。

④国の事業としての「塩」の専売を請け負った山西省人は、「塩」と共に、多くの文化を全国津々浦々に伝えた。

⑤文化の中には宗教も含まれた。その宗教と言えば当然関帝信仰であり、各地に関帝廟が建築された。


 今、福島第一原発の処理水海洋放出に伴い、中国本土では「塩」の買い占め騒動が起きていると聞いた。全く科学的根拠の無い話ではあるが、中国人にとって「塩」に対する信仰のような思いが、DNAの中に生き続けていることを思えば納得が行く。それをSNSで煽る人がいれば尚更だ。より冷静な対応が必要だ。






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