《写真漢詩》四長、公園王国に住む幸せを噛み締める。

  江東区は野望を秘めていた。野望とは「海への野望」である。古今、海を制する国が富を制し、民を豊かに出来ることは、歴史が証明している。ロシアが黒海を制するためにウクライナを攻めるのも、中国が南シナ海を制するために島嶼を埋め立てるのも。海への進出がその国の成長、存続に欠かせないと考え(本当に欠かせないのか?誤った考えだと思うが)てのことだ。

 江東区の先人たちもこのことを正しく理解していたに違いない。東京ゴミ戦争と言われた時代、敢えて他の区のゴミまで一手に引き取ったのも、そうした先見性だろう。そしてずーっと耐えてきた。この都内全域のゴミによる埋立地がいつの日か「江東の民を豊かに、幸福にする大きな力になる。」と信じて、、、そしてその野望は見事に身を結ぶ。

 ゴミ集積地として有名だった「夢の島」や「若洲」は、今や都内有数の巨大な公園(若洲に至ってはゴルフ場もある。)となった。「青海」や「有明」も「臨界副都心」として発展を続けている。「豊洲」には「東京卸売市場」が築地から引っ越したのに加え、今や高層マンション(最近はダブル億ションも珍しくない)が立ち並び都内有数の人気スポットに変身した。嬉しいのはその「青海」も「有明」も、そして「豊洲」もみんな大規模な公園が開発計画に組み込まれていたことだ。

アーバンドッグ豊洲

 先日、ある経済誌で区民一人当たりの公園面積が、江東区がダントツ一位であるという記事を見つけた。先述した埋め立て地の大規模公園化に加え、内陸部にも「木場公園」や「大島小松川公園」が開発された。もともと運河であった場所も「仙台堀川公園」を始めとする親水公園が造成されている。江東区は正に公園だらけ、公園王国である。

 最近よくある住民の幸福度ランキングや住みやすい町ランキングの指標の中には、私には何故それが、幸福度や住みやすさに繋がるのかよくわからない指標もある。でも「一人当たりの公園面積NO.1!」、これは私にはストレートに刺さる。

永代公園から佃島を臨む。

 私は、その日、隅田川の河口近くの公園を散策していた。河口といっても私が江東区に引っ越して来た30年前は、まだ海だったのかもしれない場所だ。江東区は発展し、海に向かってその面積を増やし続けてきた。そしてその多くを公園として、、今、私は江東区に住む幸せを噛み締めている。



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