《写真漢詩・短歌》四長、雲海を見て「ノンちゃん雲に乗る」を思い出す。
漢詩は、出雲空港を離陸し、羽田空港へ向かう機上で詠んだ。
毎度のことだが、私は雲の上に出ると、思い出す映画がある。幼い頃、街の公民館で見た「ノンちゃん雲に乗る」だ。私の記憶では、私が初めて見た映画だ。主演の女の子を鰐淵晴子が演じた。(最近、母親役が原節子だったことを知った。)内容は殆ど覚えていないが、この映画は、私に大きな影響を与えた。映画を観てから2、3年、私は信じていた。「雲に乗ることが出来る!」と。そして「いつかは雲に乗りたい!」と思っていた。出来ないと知ったときのショックは大きかった。
「ノンちゃん雲に乗る」の著者石井桃子は、翻訳家として「くまのプーさん」「ピーターラビット」等多くの外国の児童文学を訳し日本に紹介した。編集者としても敏腕で「岩波少年文庫」は彼女の企画・編集であり、「星の王子様」を岩波書店から刊行したのも彼女の功績だそうだ。素晴らしく垢抜けたセンスの持ち主で、彼女に憧れた文学人も数多い。太宰治は、その代表選手で、「太宰の彼女への思慕が成就していれば、太宰はもっと長生きをしただろう。」とさえ言われている。
アニメ作家、宮崎駿の彼女へのリスペクトも半端でない。彼女の責任編集の「岩波少年文庫」は彼のバイブル以上の存在で、著書の「本へのとびらー岩波少年文庫を語る」の中で「①歯がたたない。②別格であることは痛切に感じ尊敬している。③只事じゃない人だと思っている。」と絶賛している。
そういえば、宮崎駿の作品の主人公は、「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」、そして「となりのトトロ」、ほぼほぼ皆んな空を飛ぶ(もののけ姫は例外か?)。宮崎駿も少年時代、「ノンちゃん雲に乗る」の映画を観たに違いない。そして「雲には乗れる」→「雲に乗りたい」→「雲まで飛んで行こう」と想像の翼を広げていったのだろう。きっと。