《写真漢詩》四長、ウィーン・オペラ座でワルツに酔う。(ユーミン①真夏の夜の夢)
ウィーンの国立歌劇場(オペラ座)である。2019年の夏に訪れた。昼間の見学で、その日の夜のコンサートの当日券を購入した。渡航前には全く予定に入っていないイベントだったが結構興奮した。本場のウインナワルツに酔いしれ、夢心地になった。漢詩の第一句に「想出是真夏夜夢」と詠んでいるのは、その高揚感の賜物だ。
「真夏の夜の夢」、英国の文豪ウィリアム・シェークスピアの書いた舞台劇、ギリシアのアテネ近郊の森で、人間と妖精が繰り広げる喜劇である。オペラ化、映画化もされた。此処、ウィーンのオペラ座でも何度も上演された演目である。
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ウィーン国立歌劇場(オペラ座)の内部 |
その「真夏の夜の夢」をタイトルに借りて、大ヒットを飛ばしたシンガーソングライターがいる。ユーミンこと松任谷由実だ。
ユーミンの「真夏の夜の夢」。1993年、TBSのTVドラマ「誰にも言えない」(佐野史郎と賀来千香子主演の冬彦シリーズの第2弾)の主題歌だ。その歌詞はそれまでのユーミンの透明感のある歌詞の世界からはかなり遠くにある。冒頭の「骨まで溶けるよな、、、」に象徴されるようなドロドロの歌詞に、みんな驚かされた。(少し前に、ユーミンの夫で、この曲のプロデューサーの松任谷正隆が、編曲で意識したのは「猥褻・下品な感じを如何に醸すか」と言っていたのも頷ける。)
冬彦シリーズに、その曲のドロドロ感はピッタリとハマった。相乗効果で曲は、彼女のシングルでは初めてのミリオンセラーとなった。大ヒットだ。でも、タイトルが何故「真夏の夜の夢」なのか?は今も分からない。ユーミンに聞いてみたいところだ。
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昼のウィーン歌劇場(オペラ座) |
ユーミンがどこまでこのシェークスピアの喜劇を意識して作詞・作曲したのか?私には調べる術は無い。でも歌詞を読んだ私の推理は次の通りだ。「①ユーミンはシェークスピアの喜劇の内容は知っていた。②一方で自分の詞は、シェークスピアを全く意識していないで書いた。③でもシェークスピアからタイトルだけは借用することにした。」である。本人も感じていただろう。詩とタイトルのミスマッチを。何しろ、シェークスピアの舞台はアテネの森!ユーミンのはカリブ海!なんだから、、、唯、閃いたのだろう。ミスマッチさがウケると。
世界的に有名な舞台劇のタイトルを「借用」して、全く違う物語を紡ぐ。簡単な話ではない。凄まじいプレッシャーだろう。コケたときのバッシングの激しさは、タイトルがオリジナルのときとは比べようがない。恐怖心さえも伴うものだろう。それに立ち向かうには、途轍も無い勇気が、度胸が必要だ。そして何より中身の充実が、、、、
ユーミンはそのプレッシャー、その恐怖心を創作の糧にすることが出来る選ばれし人に違いない。天才!冒険者!だ。