《写真漢詩》四長、「風立ちぬ」に浸る。(軽井沢・万平ホテル2)


  昨日に続き、軽井沢の「万平ホテル」の話だ。1981年の松田聖子の大ヒット曲「風立ちぬ」を作詩した松本隆は、この万平ホテルのカフェテリアで、詩のイメージを創り上げたという。2013年、同じく大ヒットとなった宮崎駿監督の長編アニメ映画「風立ちぬ」に登場する「草軽ホテル」は、どう見てもこの「万平ホテル」がモデルだろう。

 そして松本隆も宮崎駿も、作品のモチーフとした堀辰雄の小説「風立ちぬ」(1936〜38年刊行)。小説の最終章に登場するK村の「死のかげの谷」のモデルも「万平ホテル」の裏手の「幸福の谷」であることは、堀辰雄ファンの中では周知の事実だ。「万平ホテル」と「風立ちぬ」、切っても切れない関係だ。

万平ホテル・ロビー

 「風立ちぬ!」、日本人はこのフレーズが好きだ。もともとはフランスの詩人ポール・ヴァレリーの「海辺の墓地」の一節を堀辰雄が訳し、自らの小説「風立ちぬ」の作中に登場させた。「風立ちぬ、いざ生きめやも」と続く。堀によれば「風立ちぬ」の意味は「風が吹いた」と明快だ。でも「いざ生きめやも」は、色んな解釈が可能とのこと。「生きようか、いやそれはない。死んじゃってもいいかな、、」もあれば、「生きようじゃないか」もあるという。堀は小説「風立ちぬ」の読者の自由な解釈に委ねたようだ。

 成程!「風立ちぬ」だけでなく、「いざ生きめやも」の解釈が重要なんだ!私は此処で何時もの癖で余分なことを考える。松本隆と宮崎駿は「いざ生きめやも」をどう解釈したのだろうか?と。松本隆は簡単だ。歌詞にそのままある。「風立ちぬ、、、、、今日から私は心の旅人〜」と。主人公は「心の旅人」ととして「生きていこう!」と強く言い切っている。そして、「別れは一つの旅立ちだから」とも、、、

 では、宮崎駿の方はどうか?私はこの作品が宮崎アニメの中で一番好きで何度か見た。ストーリーを思い出してみたが、こちらはちょっと複雑な感じがする。宮崎駿もアニメを見た人の解釈に委ねたのかな?と思っていたら、ネットで封切り当時のポスターを見つけた。「風立ちぬ」の大きな文字の横に、少し小さくキャッチコピーが書いてあった。「生きねば。」と。流石!宮崎駿監督!良く考えている。そして前向きだ。

写真は鹿島の森ホテルの裏庭、こちらも軽井沢の古き良きホテル。松本隆も宮崎駿も万平ホテルだけでなく、此処もモチーフにしたのではと、私は睨んでいる。


このブログの人気の投稿

《写真漢詩・短歌》臨時増刊・四長、江東区でプリツカー賞を堪能する。

《写真俳句》臨時増刊・四長、横須賀美術館で山本理顕氏のプリツカー賞受賞を祝う‼️

仙台堀日記・臨時増刊号《写真漢詩・短歌》四長、磯谷渚監督作品「ポーラーナイト」を語る。

≪写真漢詩≫四長の『現代漢詩論』