《写真漢詩》四長、八方尾根の夏のゲレンデで牛を詠む。(安曇野・白馬吟行・夏5)

 


 松尾芭蕉が「奥の細道」の中、奥州・平泉の地で、藤原氏四代の栄華と源義経の悲しい最後に想いを馳せ、「夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡」を詠んだくだり。それを教わった高校の古典の授業を今も鮮明に覚えている。驚いたのだ。芭蕉の名句ではなく、芭蕉がこの句が、唐の漢詩人・杜甫の「国破れて山河あり、城春にして草青みたり、、、」へのオマージュだと自ら記しているのに。芭蕉には大変失礼な話だが、芭蕉の教養の高さに驚いたのだ。

 今では芭蕉が万葉集や古今和歌集、特に西行の研究家だと言うことは知っている。彼が唐代の詩人の漢詩を誦じているのも当然あり得ると思える。でも高校生の私には結構驚きだった。「古池やかわず飛び込む池の音」もきっと、もっともっと深い背景があるのだろうと、途端に芭蕉を再評価したことを覚えている。生意気な高校生だった。


 そして時は流れ、あの古典の授業から50余年後。今度は私が超生意気!に、芭蕉の俳句にオマージュして漢詩を詠んでみた。場所は長野県白馬村の八方尾根スキー場のゲレンデだ。兵どもではなく牛どもが、のんびりと夏草を喰んでいる。思いを馳せたのは「冬のゲレンデ」としているが、実は「バブル崩壊前夜の頃のスキー場の華やぎ」を偲んでいる。

 あの頃、日本のスキー人口は1,860万人(現在はスノボー人口を足しても430万人と4分の1以下)、1987年には私の大好きな映画「私をスキーへ連れてって」も上映された。

 少し浮かれ気味ではあったが、日本中の若者が右肩上がりの日本経済と自分の恋愛事情をパラレルで考え、信じることが出来た時代だ。きっと、もう戻ることの叶わないあの時代の華やぎを偲んで五言絶句で詠んでみた。




 杜甫「国破れて山河あり、、」→松尾芭蕉「夏草や兵ども、、」→四長「夏景」、うーん、歴史は巡る、、、とんでもないことを考えた「真夏の夢」の話だ。

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