《写真漢詩》四長、木場公園でノスタルジーする。
正面は木場公園の桜の樹である。私はこの樹を勝手に「日立の樹」と命名した(小振りだがす形が似ていなくもない)。自宅から門仲の研究所への通勤路にあり、私はこの樹の横を通るときは、ほぼ無意識に小林亜星作曲の名曲「日立の樹」を口ずさんでいる。ほら「この樹なんの樹不思議な樹、、、」のあの歌だ。
「日立の樹」は、毎週土曜日夜のクイズ番組を日立が一社提供していて、CMタイムになると必ず流れていた。CMの映像は、「日立の樹」の歌が流れると、実際の「日立の樹」(ハワイのオアフ島のモンキーポッドの大樹)を背景に、日立グループの社名が何十社もずーっとスクロールされるというものだった。当時の日立の連結子会社は約900社(持分法適用会社まで入れると1,000社を超える)とあまりに多いため、グループ別に分けて順番に流すなど、色々苦労があったようである。
当時の私の印象は、「これは一般消費者向けではなく、日立グループの従業員向け(就職希望者も含む)だろう。日立グループなら何十万人もいる筈だからアリだな。」と大いに好意的であった。正に良い意味で「寄らば大樹の影!」だ。従業員の安心感とプライドをくすぐる名CMだと思っていた。
私はコロナを機に、テレビ(特に民放)をあまり見なくなってしまった。テレビのCM事情にも疎くなってしまったが、このCMは流れているのだろうか?
現在の日立グループは「日立金属」「日立建機」「日立化成」と主要子会社を売却し、事業ポートフォリオの選択と集中を一段と加速している。(そうしないと生き残れない時代だ。)そのことが日立経営陣へのマーケットの評価を高めている。もうマーケット的には「寄らば大樹の影」の発想はNGだろう。あのCMも懐かしいが、どうなったのか?、、、気になるところだ。
一方で、木場公園の「日立の樹」は相変わらずだ。休日や桜の季節は「寄らば大樹の影」でグループで樹の下(傘下)に集う人たちを、急な雨や紫外線からガードする頼もしい存在だ。
そして、公園にあまり人がいない平日は、私に向き合い詩歌のヒントを呉れたり、時には「昔は良かったな」と呟く私のノスタルジーにも付き合ってくれる。無口だが良き友である。