《写真漢詩》四長、フィレンツェのダンテ像に過去の記憶が甦る。(海外シリーズ・シーズン4・エピソード2)


  ダンテ・アリギェーリ、13世紀、イタリアの都市国家フィレンツェ出身の哲学者、政治家、そして、英国のシェークスピア、ドイツのゲーテとともに「世界3大詩人」「世界3大文豪」と呼ばれた。日本に於いても、森鴎外や上田敏を筆頭に明治期の文学者で彼の影響を受けていないものはいない。そんなダンテであるが、私には、彼に纏わる苦い、恥ずかしい記憶がある。(偉そうに漢詩など詠んでいる場合ではない。)

 ダンテには、彼の著作に登場するベアトリーチェ(実在のモデルがいた。)という永遠の心の恋人、理想の恋人がいる。9歳のときに、彼女を初めて見たダンテは、彼女が嫁いでも、彼女が亡くなっても、彼女のことをずーっと想い続ける。理想の女性として、プラトニックに、、、

 私の小さな頃は、日本でもまだベアトリーチェは理想の女性として有名で、チョコレートや喫茶店とかの名前、歌謡曲の歌詞、色々なところに登場した。私も何となく彼女のことを理想の女性として認識していた。そんなベアトリーチェをである、、、、

ダンテ所縁のサン・クローチェ聖堂

 私は大学生になったある日、ゼミの先輩や同級生との会話の中、話題は先輩の話がきっかけで、何故かベアトリーチェになった。そのときだ。私は何とか話題に加わろうと言ってしまったのだ。「ベアトリーチェ、ゲーテの理想の恋人ですよね。」と。一瞬の沈黙、誰かが静かに訂正して話題を替えてくれた。

 13世紀と18世紀、イタリアとドイツ、混同するはずもない。でも、私の中では混同していたのだ。ダンテとゲーテを。図らずも私の知識が受験世界史の知識で、本当の教養ではないと露呈した瞬間だった。

 そのことは結構長い間私の中でトラウマになっていた。でも不思議なものだ。最近は自分の中でも笑い話として思い出す。一人で笑っている。心の傷も時の流れが癒してくれる。本当だ。

フィレンチェ市内、2016年訪れた。

(「神曲」のダンテ、「ファウスト」のゲーテ、二人とも悪魔で繋っている。そして何より短い名前の末尾が「テ」だ。同じ混同した人いない? やっぱりいないか。)

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