《写真漢詩・短歌》四長、画家を語る(後編・カラヴァッジョの魅力)


 カラヴァッジョの魅力を一言で言えば、バロックの体現者であることだと私は思う。「バロック」とは、「真珠や宝石の歪な形」を指すポルトガル語だ。特徴は「誇張された動き」「凝った装飾の多用」「強烈な光の対比による劇的な効果」と言われている。絵の世界において、これを確立したのがカラヴァッジョ、その人である。彼の画家としての圧倒的な実力がそれを可能にした。彼は、それ以前の画家とは一線を画し、光と影、明暗を描き分けることが出来た。人間の動き、その感情の変化も写実的に捉えることが出来た。

 彼に師匠はいない。それ故、古典的理想表現やルネッサンスからも自由でいられた。一方で自分の実力だけでのし上がってきただけに、生活が荒れてきても歯止めが効かない。彼はその時代のイタリア社会の本当の闇の部分にも足を踏み入れ、最後は殺人犯として指名手配されてしまう。唯、その闇での経験が、彼の絵画の中の背徳性やグロテスク、そして劇場性を高めるのに大きく効果的に作用したのも事実だ。バロックが綺麗な真珠や宝石ではなく、「歪んだ」真珠や宝石であるなら、カラヴァッジョの「歪み」は、その闇の部分から齎されていることは否定出来ない。短歌も出来た。



 「ワルなのか?」勿論ワルである。それもちょいワルではない、正真正銘、相当なワルだ。「ワルだからのか?」これも間違い無い。ワルでなければ、あの背徳、あのグロテスクは描けない。カラヴァッジョのワルでバロックが艶めいた。

このブログの人気の投稿

《写真漢詩・短歌》臨時増刊・四長、江東区でプリツカー賞を堪能する。

《写真・短歌》四長、『青が散る』を求めて天童へ旅する。

《写真俳句》臨時増刊・四長、横須賀美術館で山本理顕氏のプリツカー賞受賞を祝う‼️

仙台堀日記・臨時増刊号《写真漢詩・短歌》四長、磯谷渚監督作品「ポーラーナイト」を語る。