《写真短歌》四長、上高地・梓川で「青」を噛み締める。(上高地吟行2)
川の名の梓は、流域が梓の木の産地であったことに由来する。その梓は古来武具や神事で使われた梓弓の材料として珍重されたと言う。そう聞くと写真の川のカーブも弓の弧に見えて来るから不思議だ。
この梓川と私が最初に出会ったのは、私がまだ小学生の頃、今から60年も前のことだ。その頃は日本の都会の川は皆公害で汚染されて濁り、灰色をしていた。そんな私がこの今と変わらぬ清冽な梓川の流れと出会ったのだ。本当に驚いた。思わず私は「此処はスイスか?」と口走り、一緒にいた姉や年上の従兄弟たちに大笑いされた。稚拙な表現だが、子供らしい正直なインパクトある言葉だったと今でも思う。
あれから時は流れ、私も大人になった。最近は生意気にも短歌や漢詩も嗜んでいる。(正確には齧っている。)梓川の美しさをもっと素敵に表現したいと考えた。まず色に着目だ。この色「青い」が「青」ではない気がした。辞書と色彩の本を捲って調べてみると「蒼」と「碧」の中間か?いや、印象派の絵画のように「蒼」と「碧」の点が互い違いに入れ替わりを繰り返しているようにも見える。
光の3原色のうちの2つ、「青」と「緑」、その中間に「蒼」と「碧」がある。昔(いやつい最近までかもしれない)の人は、同じ「青」でも微妙な色の違いを別の漢字を使うことで、豊かな自然現象を表現していた。そんなことを改めて実感。短歌を詠んだ。
うーん、我ながら平凡で捻りもない。これではインパクトだけは十分にあった「此処はスイスか?」に負ける。完敗かもしれない。