《写真短歌》四長、エロイーズで吉村順三を語る。
軽井沢の「エロイーズ・カフェ」である。まだコロナ禍にあった昨年の9月に訪れ、屋内も撮影させて貰った。今年もまた訪れようと予約を試みたが休業中だ。少し心配している。「エロイーズ・カフェ」の建物は名建築家吉村順三の設計。数ある彼の作品の中でも、私が一番好きな作品だ。
吉村順三は、同時代の前川國男や坂倉準三と比較されることも多い。(三人で共同設計したこともある→「国際文化会館」)前川と坂倉は東大出身で、ル・コルビジェの弟子、日本のモダニズム建築を牽引した。一方、吉村は東京芸大出身で、アントニン・レーモンドの弟子、モダニズム建築と日本の伝統建築の融合を目指した。そして前の二人がコンクリートの公的なビル建築を主に手掛けたのと違い、個人邸、特に木造の別荘・山荘が彼の真骨頂だった。
吉村はその著書の中で「設計の心構え」を語っている。曰く「建築ははじめに造形があるのではなく、人間の生活があり、心の豊かさを創り出すものでなければならない。」「建築は建築材料を正直に使って、構造に必要なものだけで構成しなければならない。」等々、、、、
「エロイーズ・カフェ」、吉村順三が米国人女性エロイーズ・カニンガムに依頼され、彼女のために設計した小さなコンサートホール付き別荘を、カフェに改装したものだ。建物のそこかしこに彼の「設計の心構え」を感じることが出来る。建物はだいぶ年老いて傷んではいるが、今も十分に機能的でお洒落で心地良い。そして不思議に懐かしさが溢れる。(初めての訪問なのに)
テラスでワインを傾ければ、昔、避暑地で過ごした色々な記憶も蘇る。建物が呼び覚ます過去は、どこか亡き母の昔語りに似て優しい。