《写真漢詩》四長、富山でオッドアイ熊に遭遇する(富山吟行7・富山県立美術館)。

 




 三沢厚彦のアニマルシリーズ・クマは「オッドアイ」だ。虹彩異色症、左右の眼で虹彩の色が異なる。このクマの場合は、右眼が青🟦、左眼が緑🟩だ。


 では、彫刻家・三沢厚彦は何故、このクマを「オッドアイ」にしたのだろうか?知りたいところだ。動物の中では、猫の「オッドアイ」が有名で「金目銀目」と言われ縁起が良いと珍重されてきた。ひょっとして三沢厚彦、このクマも「オッドアイ」にして縁起物としての要素を加えたかったのだろうか、、、うーん、それはないな。コイツが招き猫みたいに店先にいたら、客は皆逃げ出すだろう。

 真相を三沢厚彦自身に聞きたいところだが、それは叶わない。彼は「黙して語らず」が信条で「作品に語らす」ことにしている。滅多に創作意図を説明してくれないそうだ。作品から読み取るしかない(少し意地悪だ)。

 じっと見ていたらあることを思い出した。人間も動物なので「オッドアイ」は一定割合存在する。その中で一番有名なのが、世界史上最も有名な統治者の一人アレキサンダー大王の「オッドアイ」だ。

 ギリシアの歴史書には「大王の一眼は黒く夜を支配し、もう一眼は青く昼を支配する。そして大王は世界を支配する。」とある。そうだ!これかもしれないなと私は思った。「クマの左目は緑で樹々を支配し、右目は青く、樹々の間から覗く空を支配する。そしてクマは森を支配する。」だ。

 私は勝手にこの解釈に納得した。なぜなら、私がこの美術館で、最初にこのクマと遭遇した時、感じたのは「森」の存在だからだ。美術館の中だから周りに「森」の存在を感じさせる物は一切無い。唯々無機質な廊下に静かにクマは立っていた。なのに感じたのだ「森」を、、、

 三沢厚彦は、彫刻アニマルシリーズの動物たちの素材を「樟(クスノキ)」に限定しているそうだ。恐らく、一番は「樟」が飛鳥時代には仏像の素材であり、動物の毛並みをリアルに彫り出すのに一番適した素材であるからだろう。

 でも、私はもう一つの理由として「樟」には巨木が多く、動物たちが生きる広大な森を象徴するに相応しい素材だからではないかと思う。

 彫刻家・三沢厚彦、「オッドアイ」と「樟」で美術館を訪れる人間を一気に「森」へ誘うつもりだ、、、あくまで私の想像だ。


 この富山県立美術館の森には、私が発見しただけで、三沢厚彦のクマが巨大・大・中・小の四頭いる。本当は、もっと森に隠れているかもしれない、、、ミステリーだ。




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