《写真短歌》四長、鎌倉・長谷寺のお地蔵様と新型コロナ5類移行を喜ぶ。(湘南吟行シリーズ3)
六地蔵である。昨年末、上野毛の五島美術館の庭園内で見つけた。六地蔵の六とは六道の六。六道とは「地獄道」「餓鬼道」「畜生道」「修羅道」「人道」「天道」のこと。人間は転生を重ねて、この六つ道を巡回しなければならない定めだ。でも「人道」と「天道」はさておき、後の四道は結構ハードで辛そうだ。これを救ってくれるのが地蔵菩薩(お地蔵様)である。そして六地蔵とは六体のお地蔵様が、それぞれ六道を担当して、順に巡りながら、人間たちの身代わりとなって苦しみを背負ってくれると言う有難い存在だ。
さて、こちらは今年四月、鎌倉の古刹・長谷寺の境内である。そのお地蔵様が集団で迫ってくる。
目を左上に転じる。最初、唯の壁だと思っていたのは、よく見るとこれもお地蔵様の集団だ。まるでオーケストラや教会で後ろに立っている合唱隊みたいだ。お地蔵様は、仏教徒?イヤイヤ、仏様そのものだからゴスペルは歌わないだろうが(今にも歌いそうだが)、お経の大合唱が頭上から降って来そうな迫力だ。
もう最初は、余りの数の多さに圧倒され、かなり引いてしまった。でも段々落ち着いて来たので、一体一体観察してみることにした。そうすると、基本的には、皆さん目がタレ目で可愛い(失礼!大変慈悲深いお顔をされている)が、それぞれ違う表情をされている。特に、下の写真の木漏れ日のもとに屯す(失礼!集まられている)お地蔵様たちは、めいめい向かれている方向もバラバラだ。立食パーティー場か何かで集い、思い切り会話を楽しんでおいでの様にも見える。ソーシャル・ディスタンスは此処では死語だ。そうか、もうすぐだ。私たちにもそうした日常が帰ってくるんだ。お地蔵様さまが教えてくれた。
本日(5月8日)、新型コロナは、感染法上の5類に移行する。季節性インフルエンザと同じ扱いだ。発生から3年余、様々な犠牲を伴った日々も一応のゴールを迎えた。感慨深い。そして唐突に浮かんだ。「あの日、長谷寺で見た大勢のお地蔵様たちは、各家の先祖供養や水子供養のお地蔵様であろうが、中にはコロナ禍の最中、人々の願いに応え、人々の身代わりとして災禍を背負い、人々を救ったお地蔵様たちも何体かいただろう」と。改めて合掌した。