《写真漢詩》四長、グスタフ・クリムトの生涯を語る(上)。
グスタフ・クリムトである。今日から3日間、2019年ウィーンでクリムトの作品を撮影、その写真を見ながら詠んだ私の短歌と漢詩を紹介しながら、私なりにクリムトの生涯を振り返りたい。
クリムトの最高傑作と言われる「接吻」を見ながら詠んだ七言絶句、最初に何故か「陶酔無限」というタイトルが浮かび、後は一気に詩を完成することが出来た。詩にあるように、彼はウィーン分離派(古典的・伝統的な美術からの分離を標榜する)のリーダーである。そして世紀末のウィーンで街の退廃ムードを纏い、自由奔放に生きた人物だ。しかし前半生は意外に周到で堅実、言い方は悪いが計算高くもある。
彼は先ず、美術学校在学中から、弟や友人たちと、装飾やデザインの工房(芸術家商会)を立ち上げた。この商会は、直ぐに業界の一番手となり、今もウィーンに残る「ブルク劇場」「美術史美術館」等の装飾は、クリムトの手になるというか、この商会の仕事である。なかなかの経営手腕で、ビジネスはウィーンに留まらず、中欧(ハプスブルク勢力圏)全域に及んだ。
![]() |
ウィーンのブルク劇場、2019年訪問時は中の工事中で装飾を見学することが出来なかった。 |
またクリムトは、「画家の王」と呼ばれ、ウィーン社交会の中心人物であったハンス・マカルトに学び、気に入られ継承者と称されることとなる。それにより、マカルトの極彩色で享楽的とも言える絵画手法とともに社交界・美術界での人脈も手に入れた。
![]() |
ウィーン、美術史美術館のクリムトの装飾。 |
正に順風満帆の半生だが、そんなクリムトに転機が訪れる。契機はウィーン大学の天井画の作成である。その事件の詳細、物語については次回お話したい。
ところで、上の七言律詩だが、末句の「藝術不在倫」について、これは「石田純一」のことかと質問があった。恐らくその人は、その昔、当時トレンディー俳優として絶好調の石田純一が不倫騒動で、しつこいレポーターからマイクを向けらられ、「そういうもの(不倫)が、歴史上にも色々ある。それを題材にし生まれた作品もある。それを全否定したら、文化も芸術も全否定されてしまう。」と言ったのを切り取られ「不倫は文化」と大炎上したことを思い浮かべたのだろう。でも、それなら「不倫在文化」「不倫在芸術」だ。
私の詩は「藝術不在倫」で、訳にあるように、「アートは倫理から解き離たれている」の意だ。
石田純一も(彼が文芸作品に参加していたかは別にして)それなりにマトモなこと言ったのに、発言を切り取られ可哀想だった。唯、私の詩の趣意とは少し違う。念の為。