《写真短歌》四長、エゴン・シーレの目力に戸惑う。
エゴン・シーレ、グスタフ・クリムトともに、オーストリア、ウィーンの世紀末芸術を牽引した2大スターである。28歳で夭折したが、多くの印象的な作品を残し、先頃上野の東京美術館でも大規模な回顧展が開催されていた。
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こちらは、2019年、ウィーンのレオポルド美術館で行われた「WIEN 1900」展 |
そのシーレが、あのナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーとほぼ同時期にウィーン美術アカデミーを受験していたのは有名な話だ。今回の回顧展に合わせて、幾つかの番組でもそのことを取り上げていた。受験の結果は、シーレは合格、ヒトラーは不合格だった。歴史にイフ(i f)は禁物だが、もし受験結果が逆であったら、世界の歴史は大きく変わったかもしれない。(シーレが、折角合格したアカデミーを直ぐに中退してしまったことを考えれば、私には逆で良かった気がする、、、でも、そんなことを言ったらミューズ(芸術の女神)に怒られるかな?)
一方、ヒトラーは、結構そのことを根に持っていた様だ。ナチスが政権を取った後、政権は「退廃美術展」なる展覧会を開催、シーレの作品を国内から没収し、その中心展示とした。展示する画家の選定、作品の選定にヒトラーがどこまで関わったのか、私は正確に知らない。でもシーレについては、ヒトラーが、直接関わった様な気がする。だって、シーレが合格していなければ、自分が合格だったに違いないと。自惚れと嫉妬も強かったヒトラーは、そう思っていたに違いないから。
その作品選定のとき、この自画像はどうしたのかな?興味がある。シーレの他の作品と違って退廃って感じは全然しない。そして、何と言ってもこの目力(めぢから)だ。さすがヒトラーも、これに睨まれたら、少し躊躇したかもしれない。
最近、テレビドラマを見ていて、エゴン・シーレの自画像に負けない目力を持つ俳優に出会った。「エルピス」の眞栄田郷敦だ。彼の視線の先にある主演の長澤まさみが、その目力に戸惑う様子が面白かった。(短歌にある「視線の先で戸惑う」のは、ヒトラーではなく長澤まさみがイメージだ。念の為!)
眞栄田郷敦にはもう一つ武器がある。父千葉真一のDNAか体幹もしっかりしているのだ。大きな荷物を持って坂を駆け上がるシーンで、腰の高さが一定に保たれ感心した。俳優は目力と体幹だ!(あと声かな?)、是非、眞栄田郷敦には2つの武器でスターダムを駆け上がって欲しい。