《写真漢詩・短歌》四長、イカロスを応援する。

  2021年から羽田空港を離陸する航空機の飛行経路が変更になった。北風のとき(年間約6割)15時〜19時の間、1時間に22便程度の飛行機が、江東区上空を上昇するのが見えるようになった。騒音を心配する向きもあるが、仙台堀上空を通過するときは、もう高度も高いのか、全く聞こえない。今は、唯々上昇する飛行機が何処へ行くのか、想像して楽しんでいる。短歌も出来た。


 イカロスは、皆さんご存知のギリシア神話の中の青年だ。彼はクレタ島の迷宮から、父が蝋で作ってくれた翼で脱出に成功する。そこまでは良かったが、その後父の忠告「高く飛んではならぬ」を守らず、高天を飛翔、太陽の熱で蝋が溶けて、海に落下して溺れ死ぬ。神話の中でも「人間の傲慢さが、自らの破滅を招く。」という教訓に導かれるエピソードの主人公だ。

 そんなイカロスの名を、JAXAが、金星探査の太陽帆実証機に命名した。なんてことを!JAXAは「ギリシア神話」の教訓を知らないのか!と心配したが、直ぐに別の話を思い出した。

 昔、NHKの「みんなのうた」で聞いた「勇気一つを友として」という楽曲の歌詞だ。その歌詞の中では、イカロスは、自ら作り上げた翼を着けて高く飛び、太陽に向かう勇気ある挑戦者だ。ギリシア神話とは真逆の存在だ。曲の4番の歌詞に至っては、現代の子どもに、イカロスの「鉄の勇気」を受け継ぐものとしての挑戦を促している。JAXAは、こちらの「イカロス」を採用したのに違いない。

 残念ながら、最近、大型ロケット(JAXA)や月面探査機(民間)など、日本の宇宙計画の失敗が相次いでいる。失敗の報を聞くとついつい計画が無謀であったのではとか、もっと慎重にという声も出てくる。しかし、こと宇宙に関しては慎重すぎては前に進まないだろう。岸田首相も失敗の報の後、間髪入れずに政府としても宇宙開発の支援は継続し、挑戦を後押しする旨のtwitterを発信していたが当然だと思う。人命に関わる部分以外は、「勇気一つを友として」の精神で積極果敢に挑戦を繰り返して欲しい。(但し、命名は少し慎重にした方が良いかな。謙虚であることが挑戦の前提であることは言うまでもない。)

 最後に、漢詩も一つ出来た。だいぶ暗くなるのが遅くなった5月の空は、飛行機観察には絶好だ。一機、また一機と、羽田を飛び立ったイカロスたちは、風に乗り、月(太陽ではなくて良かった。)に向かって上昇していく。仙台堀劇場で見ることが出来る「北風時夕暮れまで限定」の贅沢なレビューだ。

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