《写真短歌》希望の朝
結果的には異常無かったが、不安を抱えて過ごした3日間の物語だ。
人間ドック行ったのは二月半ば、当日の所見は「概ね良好」とのことで、京都吟行へも楽しく出かけた。その京都から戻った日に、ポストの中にあったクリニックからの封筒は、何故か分厚かった。不安になって、少し乱暴に封を切ると、肺の画像写真と医師の紹介状と病院のリストが入っていた。クリニックからの文面を読めば「肺に白い影があり、肺結節が疑われるので、至急精密検査を受ける必要がある。」とあった。
一瞬何があったのかよく分からなかった。でも肺結節の疑いとあれば、肺がんが疑われるということだろうとすぐに理解した。その日は、疑いだから、検査をしてみなければ何も分からない。くよくよ考えても仕方ないと冷静に考えたつもりだが、全く眠れない夜を過ごした。
そして精密検査当日になった。担当してくれることになったのは若い医師。事前にネットで調べたが、「若き肺がんの権威」とのこと。先生は、私の顔を見るなり、「すぐにCT検査をしましょう。そのあと結果も説明します。」とだけ静かに告げた。検査が終わり、待合室で結果発表を待っている時間は本当に長く感じた。次かな?次かな?と思って立ち上がりかけるが、呼び出し画面に映るのは、別の人の番号だ。何故だか昔のベストテン番組がベストテン上位に来たときの画面を思い出していた。(勿論そんな良いものでは無いが、、)
やっと私の番が来て、若き権威が私に笑顔で告げる。「拍子抜けかもしれませんが、異常なしです。」拍子抜けでは無かったが、若き権威を思い切りハグしそうになった。何とか思い止まったが、、、
その日の酒は美味かった。その日は何を言われても怒らなかったと思う。
そして、その翌朝だ。寝室が少し明るくなっていくのを感じ微睡んでいるとき、二日酔いの頭が一つの短歌を思い出した。それがこれだ。
昨年のコロナ禍の五月、何回目かのワクチン接種を終えた翌朝詠んだ歌だ。昨日の興奮はすっかり収まってはいた。でも、五月ではなくまだ小寒い三月の窓を眺めながら、自作の歌に少しだけ心が動いた。