《写真短歌》作曲家シリーズ(5)ラヴェル「ボレロ」
フランスの作曲家モーリス・ラヴェルのバレエ曲「ボレロ」の話だ。これにもちょっと恥ずかしい告白がある。私が初めてこの曲を聴いたのは1982年。ホンダの車2代目プレリュードのテレビCMで聴いた。中学生時代、オーケストラ部に所属して、クラシックを聴くことだけは好きになっていた私だが、聴くのはベートーベン、バッハというドイツ系、チャイコフスキーなどのロシア系、イタリアオペラのベルディやプッチーニといったところに限られていた。フランスの作曲家は殆ど聴いたことが無かった。
CM映像はよく覚えている。ヨーロッパの街角から車が現れ、石畳の道をゆっくりと走り出すというものだ。そしてバックに流れるのがこのボレロ。最初、スネアドラム(小太鼓)がリズムを刻む中、フルートソロの弱音、それに他の楽器が被せるように加わってくる。徐々に聴いている者の気持ちを昂揚させずにはおかないあの旋律が聞こえてくる。素晴らしい!人気のプレリュードにピッタリのリズム・メロディーだ。そのとき私は強烈に思った。この続きを聴きたいと、この後、素晴らしい展開が待ってるに違いないと。私は迷わずボレロのカセットを購入した。
そしてカセットを聴いた。出だしは素晴らしい!テレビCMと同じだ。私は待っていた次のメロディ展開を。繰り返される2つのパターンが終わる度に、この次こそ、この次こそ、新しいメロディが聴こえてくるのだろうと。でもそれは裏切られる。カクッ、カクッとズッコケた感じは今も覚えている。(カセットが壊れたのかとも思った。)そして、ついに15分間(もっと長く感じたな)、ボレロは2つのパターンをくり返して終わった。
聴いた後は、正直ガッカリした。でも、すぐに理解した。想像出来た。これはクラシックに精通している人たちには常識中の常識なんだろうと。私の正直な感想は封印しようと決心した。あれから50年、時は流れた。そして今回告白することにした。その理由は、ある本で知ったのだ。ラヴェルがボレロを完成させたとき「世界の一流オーケストラは、2パターンの旋律の繰り返しに終始するこのボレロの演奏を絶対に拒否するだろう。」と思っていたと。「世界的人気曲になって一番驚いたのはボレロ自身」だったと。本人がそう思っていたぐらいなら、まあいいか!ってな訳だ。
私が聴く前からそうだったんだろうけど、相変わらずボレロは世界中で流れ続けている。映画やドラマの挿入曲、そして最近良く使われるのは、フィギアスケートの曲としてだ。そもそもフジテレビのスケート番組のテーマ曲がこれだし、予選から見ていれば、必ず誰かがこの曲で滑っている印象だ。凄いな!ボレロ!天才だな!ラヴェル!。「最初から最後まで同じリズム❗️メロディは2つのパターンのみ‼️」それで世界中を魅了した。今はそれが途轍も無くカッコいいと思う。