《写真短歌》作曲家シリーズ(3)グスタフ・マーラー『交響曲イ短調「大地の歌」独唱付き』
80年代のサントリー・ローヤルのテレビCMが好きだった。「酒を売るな!文化を売れ!」と言うトップの想い・号令のもと、山口瞳、開高健、柳原良平といった天才を輩出したサントリーの宣伝部、おそらくその天才たちの薫陶を受けた次の世代が、次々に世に送り出した珠玉のテレビCMだ。作品は多岐に亘る。「アーネスト・ヘミングウェイ篇」「ジョン・スタインベック篇」「アルチュール・ランボー篇」「アントニオ・ガウディ篇」「グスタフ・マーラー篇」「アンリ・ファーブル篇」「開高健篇」といったラインナップだと記憶している。その中でも一番好きだったのは「グスタフ・マーラー篇」だ。
CMの映像は、 西欧風の情景から、突然、中国の文人画のイラストに変わり、そのイラストが動き出す、そして映像のバックに流れるのが、マーラーの交響曲イ短調「大地の歌」の独唱という構成だ。突然、西洋と東洋が合体するのだが、違和感は全く無い。それどころか、地球上の自然や文明や全てのものが、溶け合って一つになって行く感覚すらある。私はその感覚の理由がずっと分からなかったが、今回、マーラーで漢詩か短歌を詠みたいと、色々調べている中で偶然知ることが出来た。何と「大地の歌」の歌詞は、中国の唐代の詩人たち(李白の五言律詩や七言律詩もあり)の翻訳であったのだ。自らの不勉強を恥じるとともに、当時のサントリー宣伝部の見事な演出に脱帽した。
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漢詩も創ったが、李白を前にしては畏れ多く、今回は短歌を添付した。 |
現代は本当に便利で幸せな時代だ。このサントリーCM群もYouTubeで恐らく全篇視聴可能だ。是非、ウイスキーを飲みながら視聴して欲しい。ウイスキーが美味しくなることは間違いない。「酒を売るな!文化を売れ!」大正解だ。