《写真短歌》マイボタニカルライフ(5)(再生ガジュマル)

  ガジュマルである。非常に安定感のないガジュマルである。理由は、このガジュマルの低層部分が一度枯れたことにある。その時は、本当にダメかなと思った。諦めて棄てようかなとも。でもよく見ると、すっかり葉を落とした茎の先っちょに新芽のような緑色の部分があった。棄てるのはいつでも出来る、もう少し面倒を見てみようと思い直した。それから、我ながら根気良く、丁寧に育てた。水遣りは、遣り過ぎにならないように、適度な間隔をキープ。液肥も百円ショップで買って与えた。そして暫くすると、次々に新芽が出てきて、今のような状況まで再生させることが出来た。

 再生か、どこかで聞いたことのある響き。再生といえば、故野村克也監督だ。野村監督は、南海、ヤクルト、阪神、楽天と監督としてチームを率いた。でも最初から強かったチームは一つもなく、大抵は最低の状態で引き受けたチームを優勝を争うチームに変えていった。そして野村監督の真骨頂と言えば、「野村再生工場」である。選手を再生させる手腕に長けていた。他所のチームをお払い箱になった選手や、そのチームで2軍に落とされ燻っている選手を見つけて、長所を探し、ワンポイントレッスンで再生させるのである。

 似ているな。私も一度枯れそうになった植物たちを再生させるのは得意である。もっと言えば、現在の事務所のボタニカルメンバーは、皆んな一度は危機に陥っている。皆んなそこから私が立ち直らせたのだ。それも我がチームには、そんなに高価なメンバーはいない、野球で言えばドラフト外の選手ばかりである。

「そうか、ボタニカルライフ界の野村監督か、、」と一人悦に入っていたときだ。目の前のガジュマルが何か囁いたような気がした。「初めに枯らしかけたのは誰だ!」と、、、空耳に違いないがぐさりと胸に刺さった。そして瞬間、野村監督との決定的な違いを明確に認識した。もう再生自慢はしないと心に誓った。


 今回、アルバムから写真を探し出した、2021年入団当時のガジュマル選手(写真左)だ。まだ背は高くないが、濃い緑の葉が密集し力強さを感じる。前途有望な選手であったことは間違いない。この姿を見ると若干胸が痛い。(因みに写真右の選手は早期引退している。)




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