《写真短歌》四長、鎌倉大仏で与謝野晶子にオマージュ。(湘南吟行シリーズ4)


  鎌倉、長谷、高徳院の大仏である。明治期の歌人である与謝野晶子が、「かまくらや みほとけなれど 釈迦牟尼は 美男におわす 夏木立かな」と詠んだ。本当にどの角度から見ても美男だ。

 与謝野晶子は私が一番好きな歌人・詩人である。何故なら、彼女の歌や詩には、時代や世間、倫理にも忖度しないストレートな情念が籠っているからである。夫となる鉄幹を前妻から略奪するときの「柔肌の熱き血潮に、、、」や、出征する弟を想い綴った「君死にたもう事勿れ、、、」、あの時代、あの情勢下で、あんなに率直に自らの気持ちを詠むことが出来たのは彼女だけであろう。

 そして彼女は女傑であった。地に足がしっかりと着き、経済観念にも優れ、無茶苦茶生産性の高い人であった。母として六男六女を育てながら、夫で歌人の鉄幹が、歌作も事業も極度の不振に陥ったときは、彼女が何百という商業的な和歌を創作し家計を支えた。そして鉄幹を立ち直らせるために、彼女はその苦しい家計から渡航費用まで捻出しフランスへ鉄幹を送り出した。(後に自らも渡仏したが、結局、鉄幹を立ち直らせることは出来なかった。)

高徳院観月堂、朝鮮李王朝の月宮殿を移築。横に与謝野晶子の歌碑がある。

 でも、何故ここまで鉄幹に尽くすことが出来たのだろう、、、鉄幹は浮気もしていたみたいなのに、、略奪愛を貫いた意地かな?、、現代では考えられないなと、大仏を見ながら考えていたら答えは簡単に見つかった。与謝野晶子の声がしたのだ。表情ひとつ変えず、キッパリと「面喰いですが、何か?」って、、、

 今、ネットのモノクロの写真で見ることが出来る与謝野鉄幹は、確かに面長で高杉晋作風、知的で精悍!そして、そう正に「美男におわす」、、、いつの世も、イケメンには敵わない。



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