「立葵(タチアオイ)」である。日本列島では丁度梅雨入りの頃から咲き始め、梅雨明けの頃まで花が開花するため、「梅雨葵」とも呼ばれる。花の色は、赤、白、ピンク、紫と大変多彩である。古来、中国から薬用として渡来し、平安時代の源氏物語の柏木にも、この花を詠んだ和歌が登場する。 そんな「立葵」、名前の如く直立している。地面から茎が真っ直ぐと空に向かって伸び、1〜3mの背丈となる。丁度2mくらいの背丈であれば、茎の先の花弁の部分が顔のように感じられる。眼は無いのに眼が合う感じがする。
そう、私はよく「立葵」と眼が合う。昨年の夏には特に目が合った。そして、その頃の「立葵」は私に何か話したげ?であった。いや、話したげというよりも、何か私に文句がある、訴えたいことがあるといった感じがした。ある時は、背中に何か気配を感じ、振り向いたら、「立葵」がじっとこちらを恨めしげに睨んでいた。少し怖かった。
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振り向いたら、「立葵」が恨めしげに睨んでいた。 |
しかし、私には立葵の恨みを買う理由は無い。イジメたことも無いし、悪口を言った記憶も無い。何故だ!と少し真剣に考え出したとき、立葵の横の「木槿」が目に入り、あることに気が付いた。
「立葵」は「木槿」に嫉妬していたのか!早速、翌朝「立葵」のために一首詠んだ。
実は、まだ秘密がある。それまで「立葵」を詠まなかったのには理由があった。知らなかったのだ。「立葵」という名前を!。 でも、言えない。とても「立葵」には言えない。「実は君のこと、名前も知らなかったんだ。」とは、、、